アルマクと幻夜の月
「いいもん持ってんじゃねえか。それ、俺に譲ってくれよ」
「……嫌だ。これは、あたしのものだ」
ニヤニヤ笑いながら言う男を睨み返して、アスラは頭を横に振る。
だが、アスラの抵抗など、男にとっては些末なことなのだろう。
嫌だと言ったところで、アスラの持つ水差しを力ずくで奪うことなど、男にはたやすい。
「そう言わずに、な? あんた、見たところいいとこの嬢ちゃんだろ?
服の質がいいもんなぁ。ちょっとくれえ恵んでくれてもいいじゃねぇか」
ジリジリと近づく男を睨みながら、アスラもジリジリと後ずさっていく。