アルマクと幻夜の月
混乱して頭が真っ白になったアスラを挟んで、二人の男は下卑た笑みを浮かべる。
「ほら嬢ちゃん、痛い目見たくなけりゃあ、さっさとそれを渡しな」
「それとも、あんたごと売っぱらうか。よく見りゃ綺麗な顔をしてることだし、高く売れるだろうな」
「そりゃあいい。……おら、さっさと立てよ!」
青ざめたアスラの腕を赤ら顔の男が乱暴に掴んで、無理やりに立たせようとする。
そのときになって、ようやくアスラは「やめろ! はなせ……!」と声を上げた。
がむしゃらに腕を振って男の手から逃れようとする。
だが、その先をアスラは考えていなかった。
――この男達からどうやって逃げるのか。水差しをどうするべきか。