アルマクと幻夜の月
細身ですらりとした体にまとうのはただのカンドゥーラ(白い長衣)なのに、
この男が着るとまるで神話に出てくる神々の衣のようだった。
男は黙ってアスラの方へゆっくりと歩いてくる。
近づくと、その背の高さに驚いた。
女性の中でも長身な方であるアスラより、頭一つは大きい。
男はアスラを見下ろして、ゆらりと腕を持ち上げると、アスラの頬に優しく触れた。
「おまえか」
大きな手は、ひんやりと冷たい。
「おまえが、私の主(あるじ)か」
「は?」
アスラが思わず眉をひそめると、頬に触れていた男の手が離れた。