アルマクと幻夜の月
「では、」
一つ息をつくと、ルトはアスラの手から果物を受け取って腕に抱えた。
「ぼくはそろそろナズリ様のお部屋に参りますね。姫はどうされますか?」
一緒に来るか、と、おなじみの質問をするルトに、アスラはやはりいつものように首を横に振った。
「あたしはいいさ。……行っても、母上はあたしにお会いにならないだろうし」
ルトはそれ以上はなにも言わず、「では、失礼します」と言ってアスラの部屋を出ようとする。
その小さな背中を追いかけるように、アスラは小さく声をかけた。
「いつもありがとうな、ルト」
立ち止まって振り返ったルトはいたずらっぽく笑って、
「今さらですよ」
と、生意気なことを言い残し、今度こそ部屋を出ていった。