アルマクと幻夜の月
「ところで姫様、昨夜はどうされていたんですか?
いなくなったと思ったら、普通に王宮内で見つかって驚いたんですよ」
ルトはこれが訊きたかったのだろう。
興味津々、といった目をまっすぐにアスラに向けている。
昨夜、結局アスラとイフリートは夜通し王都上空を飛び回って、空が白んだ頃にようやく王宮へ帰ってきた。
その後あえて王宮の庭へ出て兵に見つかり、「ずっと王宮内の皆の知らない秘密の場所にいた」と言い訳をした。
他の王女ならばそうはいかないが、こればかりはアスラの普段の行動が幸いした。
アスラならば秘密基地の一つや二つ作っているだろう、と誰もが納得し、
人騒がせな王女だと呆れられながらも、アスラは王宮を抜け出したことを隠し通した。