アルマクと幻夜の月
「本当にあなたは、無茶なことをしますね」
ルトが大きな嘆息と共に言った。
「今回はたまたま見つかりませんでしたけど、他の者に知れたらまた立場が悪くなりますよ。わかってるんですか?」
ルトはアスラが王宮を出入りした手段も、そもそもなぜ王宮を抜け出したのかも訊かない。
「では、僕はそろそろ」
そう言って一礼したルトに、
「うん、ありがとうな」
と、アスラは笑いかけた。
そのまま背を向けて去っていくかに思われたルトは、しかし立ち去らず、なにか迷うように宙に視線を泳がせる。