アルマクと幻夜の月
「ちなみに正妃は生きてるぞ」
イフリートも同じことを考えていたようで、アスラがなにか言うより先にそう言った。
アダーラがスルターナを毒殺したか、スルターナがアダーラに毒を渡したか。
スルターナが生きているとなれば、前者ではなくなる。つまり――。
「スルターナが、アダーラに毒を渡した。おそらく誰かを殺させるために。――でも」
納得がいかず、アスラは眉をひそめる。
わざわざアダーラに誰かを毒殺させるということは、十中八九、アダーラが王と王妃に注いだ酒に毒を入れるのを狙っている。
だが、その酒を飲むのは正妃――スルターナ自身だ。