アルマクと幻夜の月
「王の崩御を狙っているのか?」
イフリートが言ったが、アスラは即座に首を振った。
「酒を飲むのは妃が先なんだ。そういう決まりになっている」
まさか自殺をしようというのではないだろう。
あまりの不可解さに二人は黙り込んだ。
そのとき。
「姫様! アスラ姫様、いらっしゃいますか!?」
扉の外から、宮女の慌てたような声が呼んだ。
「いるぞ。どうしたんだ?」
隠れろ、とイフリートに目配せをして、アスラは答えた。
イフリートは黒い鼠の姿になって、寝台の下にサッと隠れる。
宮女が扉を開けて部屋に入って来たのは、その一瞬後だった。