アルマクと幻夜の月
「母上、単刀直入に申し上げます。――今夜のジャウハラの祭、王妃の代理として出席するのはお止めください」
アスラの言葉に驚くでもなく、ただただ穏やかな表情を浮かべたまま、ナズリは「どうして?」と首をかしげた。
「アダーラの注ぐ酒に毒が入っているかもしれません」
アスラはイフリートのことを除いて、昨晩のことを説明した。
正妃の部屋を出入りするアダーラを見たこと。
アダーラが毒の小瓶を持っていたこと。
毒の小瓶は奪ったが、毒がなくなったことに気づけばまた新しい毒を用意するかもしれないこと。
ナズリはその話を、すこしも表情を変えずに聞いていた。