アルマクと幻夜の月


にっこりと微笑み、ナズリが言う。

その言葉にひとまず安心し、アスラは強張った表情をすこし緩めた。


ナズリに見送られながら部屋を出て、アスラはとぼとぼと歩きながら自室を目指す。


周囲に黒い鼠の姿がないことには気がついていたが、宮女の目があるので、あからさまに探し回ることはできないでいた。


(イフリートはどこへ行ったんだ……)


心配はしていない。

仮にも魔人が、例えば鼠取りに捕まるなんてことはしてないだろう。


(例のアダーラの様子でも見に行ったのかもしれない)


きっとそんなところだろう、と結論付けて、アスラは自室に急いだ。

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