アルマクと幻夜の月

*第一夜 9*


ジャウハラの夜は宝石の夜。

都中が光に輝き、民は煌びやかな衣装に身を包み、人々の笑顔が夜を彩る。

都が、一つの宝石となる。


誰もかれもが日頃の憂さを忘れ、祭に浮かれる。

ジャウハラの夜はそんな幻の夜。


アスラは祭に臨席するため、絢爛豪華なマフマル(ラクダに乗せた輿)に乗ってゆっくりと広場へ運ばれていた。


夜空には満ちてゆく途上の半月が浮かび、

この先もますます強く豊かになっていくアルマクの国のよう、と詩人は喩えた。


だが、輿の亀甲紗越しのアスラには、美しい月など見えない。


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