大切なもの
父親は大好きだった。
すごくすごく大好きだった。


母親からの毎朝の罵倒。
パチンコで負けてお金がなくなるといつもそう。


朝から、「ゆう(弟)、ご飯よー」
・・・と。
「沙良は来なくていいから」
・・・と。


学校の準備をしてると
「まだあんたいたの?さっさと行けば?
 いっそのこと、帰ってこなくてもいいけどー!」


と・・・。


毎朝泣きながら学校へ行って
けれど誰にも涙なんて見せたくはなかった。


目をごしごし。
赤くなるまでこすって
門を通る時は「はぁ~っ」
とあくびの真似。


誰からも泣いてるなんて思われたくなかった。
悲しそうな子って同情されたくなかった。


だから私は演じるの。
完璧な子を。
成績は優秀。
私立の中学校も余裕で合格のレベル。


担任からも
私立を受験しなさいと。
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