狙われし姫巫女と半妖の守護者


すぐに横を向こうとしたら、左の耳元で大きな音がした。

即座に横目で確認すると、血管の浮き出た彼の手が岩肌に貼りついている。

怖々前に向き直ると、息のかかりそうなほど近くに彼の端正な顔があった。

「ちょちょっと、近いです……」

今度は右を向こうとしたけれど、彼の反対の手にそっと阻まれて心臓がドキッと跳ねた。

少し見上げると、彼の瞳に私が大きく映り込んでいる。

両側につかれた手は骨ばっていてたくましく、私は完全に彼の腕の中。

私はカバンをギュッと抱きしめて、声を張り上げた。

「あの、私なんかをからかわないでください」

こんなかっこいい人が、特にかわいくもない私をからかうなんてイジワルだ。

「そんなに怯えないでよ。ねぇ、姫巫女様」

その言葉を聞いて、カバンを抱く手が思わず緩んだ。

不思議に思って彼の顔を覗き込むと、面白そうに目を細めて笑っている。


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