狙われし姫巫女と半妖の守護者
第二章 姫巫女
遠き記憶の君
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墨で塗りつぶされたようなまっ黒い森の中。
何度も転んでは立ち上がって、足がちぎれそうなくらいに走っていた。
幼稚園の園服は泥だらけ。
泣きじゃくっている頬はもうビチョビチョ。
たまらずに大きな泣き声をあげ、小さな足を一生懸命前へ前へと動かしている。
出口も明かりも、なんにも見えない。
閉じ込められたみたいにどこまでもまっ暗な森が続く。
さっきからずっと、目に見えないなにかが追ってくるんだ。
「あれが姫巫女の子供かぁ?」
「子供はただでさえうめぇ。姫巫女の子ならもっとじゃねぇか?」
「早いとこ食っちまおうぜ」
イヤらしく裏返った声がどんどん近寄ってくる。
振り向けば真後ろにいそう。
「イヤだイヤだ、やめてー!」
怖さから耳をふさいで泣き叫ぶ。