狙われし姫巫女と半妖の守護者
「ふーん、まだ消えてないんだ」
彼はそう言いながら、私の両手首を掴み上げる。
「なにすんの! 離して」
私は歯を食いしばって身をよじる。
「忌々しい痕だ。早く消えればいいのに」
喉の奥で笑いをおさえたような声で呟きながら、彼が指先で胸元に触れる。
私は彼の指先の感触に耐えながら、襟が開いた胸元をちらと見た。
鎖骨の下あたりに、物心ついた時にはもうあった鈴のような形の痣がある。
それが彼になんの関係があるっていうの?
でも私はその時すぐに目を疑った。
彼の爪がマニキュアでも塗ったように黒く染まり、鋭く尖っていく。
全ての指がみるみるうちに変化していく。
動かそうとした唇が震え、息が止まる。
けれど声をやっと振り絞る。
「あっ、あなた、何者……?」