狙われし姫巫女と半妖の守護者
いやいや、そんなことありえない。
ただ私が忘れているだけ。
記憶を絞りだそうと顔しかめる。
苛立つように教科書を叩いていた指が、ねじ込むようにページを押していた。
爪で擦られたツルツルとした紙が虚しく鳴く。
なん、で……?
記憶の糸を必死に必死に手繰り寄せたのに、頭はまっ白。
自分の足で帰った記憶がない。
パズルのピースをなくしたみたいに、記憶が欠け落ちている気がしてならない。
空白の記憶に、心が焦りだす。
私の教科書を握る手には自然と力がこめられ、畳みかけるように考えを巡らせる。
なにか、核心に迫っている気がする。
あぁ、夢に出てきたあのお兄さんは、誰だった……?
胸が一気にざわめきだす。
少し息が荒くなる。
きっと、聞くまでもない……。