狙われし姫巫女と半妖の守護者


彼は絶対、人じゃない……。

動揺しすぎて焦点の定まらない私を見物している彼は吹き出した。

「本当になにも知らないの? じゃあ、まずはなにをしにきたのか教えてあげる」

そう言った彼は今日とびっきりの笑顔を見せる。

「君をさらいにきたんだよ、姫巫女をね」

満面の笑みとともに解き放たれた、彼の冷酷な声。

耳元を通り過ぎる、洞窟からのやかましい風の音。

私の髪が、風に巻きあがる。

「どういう意味?」

私は、風に負けるくらいの小さな声でしか呟けなかった。

「呑気に生きてきたんだね。だから簡単に騙されるんだよ」

彼は侮蔑を含んだような白い目を私へ向け、言葉を吐き捨てた。

同時に手が解放され、私の体は崩れていく。

でも彼がすかさず黒い指先を一振りすると、私はなにかで後ろ手に縛りあげられた。


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