狙われし姫巫女と半妖の守護者
「泣いてなんかないよ~。泣くことなんて、なんにもないじゃん。ちょっと、トイレ行ってくるね」
「いや、凛なにかさ……」
引きとめるように、背中へと言葉が投げかけられる。
だから私は全部言わせないように言葉を覆いかぶせた。
「真央ってば、私はもう小学生の頃みたいに子供じゃないんだよ? 休み時間終わっちゃうから行ってくる」
振り返りもせずに、心配してくれている真央を突き放す。
芝居下手のぶっきらぼうな言い回し。
何回目かになるのに、相変わらず下手で唇の端を噛んだ。
「う、うん……」
元気のない真央の返答はまるで針のように、私の心を淡く刺す。
私は真央に、こんなこと言える人間じゃないのに、言ったからだ。
それでも私は知らんぷりして教室を出た。
真央をキズつけた罰なら、この騒動が終わったら、いくらだって受けるつもりだ。