狙われし姫巫女と半妖の守護者
*・*・*・*・*
私は腕が目いっぱいに伸ばせないほど狭いトイレの個室で項垂れていた。
人気がなくて周りは静か。
見上げてもなけなしの蛍光灯の明かりが降ってくるだけで、薄暗い。
私は用もないのにトイレに腰掛けたまま、壁に拳を打ちつけた。
でも、その手の力はあまりに弱くて、コツリというわずかな音が壁にのまれて消えていく。
そのあとは、ずるずるとだらしなく、壁の側面を拳が滑っていくだけ。
私は俯き、唇の端を引きつらせて、苦々しく自分を嘲笑う。
ねえ、結局私にはなんにもできないよ。
紫希に守ってもらってばかりで、真央には心配を駆けぱなっしで……。
蹲っている私の膝には、濃い影ができていた。
私は左胸のあたりのブラウスの一部をそっと掴む。
やっぱり、真央にウソをつくのは心が痛い。
チクチクと重い痛みがまとわりついて離れないんだ。