狙われし姫巫女と半妖の守護者
指先を滑りゆく冷えた水、流れたままの音。
真央の声が、私の脳裏で反響していた。
でも、私はきつく口をつぐんで、蛇口を力任せにきつくひねとめれば、きゅうっと悲鳴のような鳴き声がした。
早く、真央の前から去らなくちゃ、ぼろが出る。
私は随分と他人行儀にそそくさと真央の横を通り抜ける。
「私さ」
急に真央が声を張り上げて、私を呼びとめた。
狭いトイレの壁に声が跳ね返って、四方八方から私を引きとめる。
足が重くて前へ出ない。
「そんなに私、信用されてなかったっけ……? なんで、なんにも話してくれないの……?」
背中で聞く真央の声。
静かで弱々しい声は、私の胸の奥深くにたどり着くには十分すぎた。
鉛をのみこまされたように、心がずしりと重くなる。