狙われし姫巫女と半妖の守護者
唇を薄く開けたのに、言葉が出てこない。
いくら考えても、キズつけてしまう言葉とあやしいウソしか思いつかないんだ。
守りたいと思っているだけなのに、キズつけてしまうのはなんでなんだろう。
一番、キズつけたくない人なのに。
見なくても、後ろにいる真央があの日のように笑っていないことなんてわかっていた。
だから私は瞼をかたく閉じて、思いをぐっと押しこみ、床を蹴りだした。
ここで逃げれば、真央の元へは帰れないような気が、直感的にした。
でも、ひとりでろう下へと出てしまった私。
別に走ってはいないのに、背後の真央との距離が何倍にも広がっていく気がする。
ずっとずっと遠くに……。
もう、呼びとめる声も聞こえなかった。
私がひとり歩むろう下は、潤む目には痛く染みるほど、まっ白だった。