狙われし姫巫女と半妖の守護者
少しはれぼったくなった瞼から手の甲を剥がすと、目の端で癖っ毛の赤髪がふわふわと風に揺れていたのだ。
静止したまま恐る恐る視線を下げれば、まっ赤な金属製のベンチにぼさっと座っているひとりの男の子。
タイ焼きのしっぽがちょろりとはみ出している口元に、私は釘づけになった。
「ね、猫丸くん……、なにしてるの……?」
私は引きつった苦笑いを浮かべて、たどたどしく問う。
こんな時に会いたくなかったし、なんかがっつりタイ焼き食べてるし……。
しかも、ベージュのカーディガンの腕は、いくつものタイ焼きの入った紙袋を大事そうに抱えこんでいて、ぎょっとした。
「そのくらい見ればわかるでしょ? タイ焼き食べにきたの」
猫丸くんはタイ焼きをひとのみにし、目尻のつり上がったくりくりとした瞳で私を冷ややかに見あげている。
その目にぞっとしながらも、ちらと上を盗み見ればここは、たまに真央とも立ち寄ったことのある古いタイ焼き屋だった。
「あのさ、ひとつあげるからいい加減、僕の前に立つのやめてよ」