狙われし姫巫女と半妖の守護者
その声についびくついたけれど、私はあんな小さなネコに酷いことをした彼を許せない。
私は負けずに睨み上げる。
「兄貴はさ、たったいくつか年上なだけで、偉そうに命令してムカつくんだよ。君のその目も同じくらいにね」
彼は低い声でひとり言のようにぼやくと、私の前に勢いよくしゃがみこんだ。
そして、その黒い指先で私の顎を掴み、自分の方へ向かせる。
「だからちょっとくらいつまみ食いしても、悪くないよね」
彼の声は笑っている。
なのに、彼の眉は切なげに歪んでいた。
それでも、私の背中に手を回し、力任せに私の体を引き寄せる。
「イヤ……!」
急速に迫っていく彼との距離。
瞬きほどの間に近づいた彼の唇。
私は身をかたくし抵抗にもならない抵抗をしながら、瞼をきつく閉じた。