狙われし姫巫女と半妖の守護者
ずっと遠い天空に浮かぶ大きな雲を眺め、喉の奥でなにか引っかかっているように苦しそうな声をあげた。
「本当は僕らよりも強い力を持ってるっていうのにさ、隠しちゃって……。剣術だけで戦うなんて理解できないね」
タイ焼きにかけたままだった手には力がこもり、お腹を押しつぶして餡子が飛び出ていた。
拳はわなわなと震え、険しく細められた瞳はオレンジ色に鋭く煌めいた。
スペースを開けても空気から伝わってくる、いらだち。
私はただ息をひそめた。
あんなに全力で戦っていたのに、なにを隠しているっていうの……?
聞きたいのに、なにか触れてはならないものが目の前に横たわっている気がして、声も紡げない。
いつもの、あの眠そうな乱麻くんとは正反対だ。
でも、乱麻くんはおもむろに私の方を向いたのだ。
いつもと同じだるそうな目で。
緊張の糸がやっと途切れる。
「それに、君のことをいつまでも温室育ちにさせようとしてさ。バカなんじゃないのかなって思うよ」