狙われし姫巫女と半妖の守護者
乱麻くんはせせら笑う。
呆れかえったようにベンチの背もたれへ、ぐったりと背を預けた。
なにも教えなかったくせに、温室育ちってなに……?
私はもらったタイ焼きを握りしめ、さっきまで引き結んでいた唇に力をこめた。
「そんなこと言われたって知らないよ……。私は人間の娘よ? 普通の人間よ!」
姫巫女とか、死守すべき存在とか、なんでこんな勝手なことを言われなくちゃならないの?
頭を掻き毟りたくなるくらいにもどかしい。
烏天狗にも、乱麻くんにも、もう言われるのはイヤだ。
私はベンチに拳をつきたて、乱麻くんを睨みつけた。
「これだからなぁ、困るよ」
なのに、乱麻くんの冷めた視線が刺さる。
薄く開いた唇の隙間から、決定的な言葉が流れ出した。
「人の目には見えないようなもの、感じたことがあるんじゃないの?」