狙われし姫巫女と半妖の守護者
「てことは、あんたが園児の時、紫希くんが中学生くらいでもおかしくないよね」
目尻のつり上がった大きな目があやしく光る。
そして微笑む口元から、少しギザギザとした白い歯がのぞいた。
「だって紫希くんはさ、もうすぐ16年前になる烏天狗の大襲撃の日からずっと、人間界でひとり、暮らし続けてたんだから」
言の葉が、舞いあがり、散っていく。
あまりにもさらりとした、ひっかかりのない声音に私は目をみはる。
長い年月が、はらりと呆気なく目の前を落ちていく。
16年なんてそんなに軽い年月じゃないのに。
今の私の一生分と、同じ月日なのに……。
「僕がまだ赤ん坊だったあの日、烏天狗を一掃するために強い結界が張られた。それから脆くなったつい最近まで、半妖の村と人間界は断絶されてたんだ」
飲み込めないまま、乱麻くんは真実を紡ぐ。
「だから僕も、紫希くんには最近になって初めて会ったわけで、なにも知らないよ」