狙われし姫巫女と半妖の守護者
けれどその時、金属がたてる凛とした音が私の鼓膜を貫いた。
すると乱暴に手を離され、私の背をかたい岩肌が受け止めた。
なにが起こったかわからず、私は慌てて瞼を押し開く。
するとなぜか私の前には、淡い灰色の着物姿の男の人の背中。
短い漆黒の髪が、はらりとばらけて風に踊る。
「いいところで邪魔しないでくれるかな?」
着物の男性の向こうから、あの男の声が聞こえてくる。
「とっとと去れ、烏天狗」
着物の彼が、辺りに響き渡る低い声ですごんだ。
肩越しには刃が煌めいているのが見える。
「この娘をお前らに渡す気はない」
声は張り上げられ、刀は音をたて、彼は今にも地を蹴らんと構えなおした。
それに圧倒されたように、周りの草が波を打つように激しく揺れる。
私はわけがわからず座り込んだまま、彼の広い背中に呆然と見惚れていた。
一体、彼は誰……?