狙われし姫巫女と半妖の守護者
「もうすぐ、凛の誕生日だろう。なにか欲しいものあるか? ケーキは生クリームのが好きだよな」
お父さんが穏やかに言う。
私はそんなことどうでもいい。
「私の誕生日だけじゃない。今月は、お母さんの命日もあるよ……」
私の静かなつぶやきが、蛍光灯の白すぎる明かりがおりる茶の間に、重く沈みこむ。
いつもと調子の変わらないお父さんを、私はテーブルをはさんで見つめていた。
「ねえ、お母さんは、なんで亡くなったの?」
なんにも知らない子供のように、父親へまっすぐに問う私。
緊張する心臓は、落ち着かずに騒いでいる。
なのにお父さんは、なぜか目を逸らして箸を置く。
私の映っていない、瞳がくもりはじめる。
でも、それでも私は、お父さんの口から、本当のことをききたい。
しんとした、冷たいこの空間はまるで音のない海のようで、私は息を殺して待っている。