狙われし姫巫女と半妖の守護者
「烏天狗」
短いけれど、それはしっかりとした響きを持って、私自身の唇から出ていく。
するとテーブルは大きく派手な音を轟かせ、箸が畳の上に転がり落ちたのだ。
下を向いていたはずのお父さんは、真っ青な顔で目を見開き、穴があくほどに私を見ていた。
私は想像以上の反応に、心臓が大きく跳ね上がったけれど、それをおさえこみ、更に核心をつく。
「お母さんの死には、姫巫女伝説が関わってるんじゃないの?」
胸は不安で爆発しそうで、怖くて仕方なく、声が濡れた。
でも、信じたくもないのに今は、この可能性の方が私に根拠もない自信を与えていた。
だってこんなに、お父さんが驚くなんて思わなかった。
私は転がった自分の箸も拾えずに、ふらつかないようテーブルにしがみついているのが精いっぱいだった。
もう、私はいつまで耐えられるかわからない。
「なにを言ってる……? お前は、だって、お前は、そんな話を信じる子じゃ、なかったろう……?」