狙われし姫巫女と半妖の守護者
立ちはだかり続けてくれている彼の背中がとても大きく見える。
だけど、あの男の声がふいに頭上から降ってきた。
「そんな口がきけるんだっけ? 高貴な烏天狗の血族に」
その言葉にはっとし、初めて気づく。
私たちのところは日を遮られ濃い影が落ちていて、徐に空を見上げた。
「えっ……」
そこに広がる光景に、限界まで目を見開き声を失う。
私はそのまま崩れるように岩肌にもたれこんだ。
信じられるはずがなかった、人が空に浮いているなんて。
あの男の背から生えている、人間をも包み込んでしまいそうに大きいまっ黒な翼。
私の鼻先をはらりはらりと舞い降りていく黒い1枚の羽根が、現実なんだと言いたげに、もったいぶって落ちていく。
あの男は、化物だ……。
「姫巫女の君は僕のことわかったよね? なら、僕についてくるね?」
男は脅迫的な笑みを浮かべ、私めがけて指先から黒い光線を放った。