狙われし姫巫女と半妖の守護者
地を蹴る足は止まらず、風が頬を容赦なく切る。
子供扱いはもういらない。
お父さんと顔なんて合わせたくない。
信頼されていないのに、どうやって信じろっていうの?
暗幕が落ちたみたいな夜空。
迫ってくる真っ暗な茂みは怪物のように、ぽっかりと口を開け待ちかまえている。
今私をかくまってくれるのなら、どこでもかまわない。
お父さんと顔を合わせずに済むのなら。
だって私はもう、子供じゃないのだから。
「凛、どこへ行った!?」
境内に轟く声に弾かれて、私は歯を食いしばり、全速力で走りこむ。
そしてついに、漆黒の森へ飛び込んだ。
右も左もわからずに、闇の濃い森の中をひた走る。
小枝を踏む乾いた音はさわがしく、よく見えずに木の肌に袖を何度もひっかけた。
でも私はどうにでもなれと、行き先も知らずにめちゃくちゃに走る。