狙われし姫巫女と半妖の守護者
このままでは、前に進めないから。
「昔、紫希がこの森で助けてくれたよね? たぶん、記憶がよみがえったの。私そんな昔から守ってもらってきたのに、なんにも知らない……。今もただ守ってもらってるだけ」
これからもなんにも知らないまま、呑気に守ってもらうなんてできない。
鉄骨が落ちてきたあの日のように、彼が私のためにボロボロになるのを見ているのは耐えられないんだ。
「あのとき私に飲ませたのは、記憶を消す薬なんでしょう? 紫希がそうまでして秘密にしたいものってなんなの?」
紫希は言葉を失って、なにかあり得ないものを目にしたように目を丸くする。
きっと、あなたは驚いているんだろう。
だけど私には、あの記憶の中の紫希の悲しげな目が焼き付いている。
「私は知りたい。もうすぐ16年前になるっていう戦のこと」
紫希の着物を決して放さずに、私の眼いっぱいに紫希をとらえる。
きっと、すべてはその日に隠されている。
「私のお母さんは、姫巫女伝説にかかわっていたんじゃないの?」