狙われし姫巫女と半妖の守護者
心臓が大きく鼓動を打つ。
彼の顔はもう鼻先に。
腕に力を入れても、地面に落ちた枝の端が手の甲を引っ掻くばかりで、紫希のおさえつける手はびくともしない。
まったく身動きがとれず、紫希にとらわれている私。
決して抗えない力の差に、私は奥歯を噛み締める。
「子供じゃないっていうはな、こういうことだ」
紫希の手が乱暴に私の顎にかかる。
重なる視線。
私の心はチクリと痛む。
さっきまで触れれば切れてしまいそうに鋭かったあの瞳が、闇夜を背に揺れまどっていた。
孤高の強さを表したあの光はなりを潜め、苦渋に染まっていく。
私は体から力を抜き、切ない思いで紫希を見つめあげた。
「別に、私はいいよ……。全部、本当のことを教えてくれるなら」
声はすんなりと出て、もう怖さはなくなっていた。