狙われし姫巫女と半妖の守護者
彼は私の声に音をたてて息をのみ、力を弱めた。
あんな瞳を見て、誰が怖がるだろう。
なんども守ってくれた彼に、乱暴なことができるわけないのだ。
だって、本当は優しい人なんだ、きっと。
彼は私とはもう一切目を合わせずに、私の上から退き、背を向けて立ち尽くす。
「お前はバカか……。そうまでして知りたいなら、本当のことを教えてやる」
むくりと起き上った私の目には、ダラリと下ろした拳がきつく握りしめられるのが見えた。
突然弱くなった声。
風がやんだ森は静けさに包まれる。
闇は濃く、私たちだけをこの空間に閉じ込めていく。
私は少しの音もたてまいと、1ミリも動かずに紫希の言葉を待った。
すると研ぎ澄ませた聴覚が、彼の息を吸う音を漏らさず聞き取った。
体が一気に身構える。
「お前の母親は、16年前の戦で死んだ」