狙われし姫巫女と半妖の守護者


声が、出なかった。

私は両手で口を覆い、呆然と座り込んだまま。

なんで、お母さんがそんな戦に巻き込まれたの?

お母さんは、なにをしていたの……?

「お前の母、涼子様は、半妖の村を加護する偉大な姫巫女様だった。故に、その身を烏天狗どもに狙われた……。そうしてお命を、お落としになった! 我が半妖の村のために!」

紫希は絶叫する。

頭を抱え、地に崩れ落ちる。

その声をからした叫びは、辺りの木々にぶつかり、私たちの頭上に降りおりる。

視界をまっ黒に塗りつぶされたみたいだった。

私は、半信半疑のままむせび泣く。

なにも見えない世界の中で、顔を覆った手が涙に濡れる。

お母さんの最期は、そんな残酷なものだったの……?

あの、烏天狗たちに殺されたっていうの?

いったい、なんの恨みがあって……?


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