狙われし姫巫女と半妖の守護者
私のお母さんが、なにをしたと言うの……。
涙を拭っていた指先に、苛立ちから力がこもる。
そもそも、お母さんが姫巫女だったということ、お父さんはなぜ教えてくれなかったの?
あんなにとぼけて、お父さんにはなにかあるの?
私は顔から手を話し、震える拳を強く握りしめた。
涙なんてピタリと止まり、烏天狗への憎悪と、秘密にしていたお父さんへの不信感が、心の奥からわき上がってくる。
「お前は、今はまだ普通の人間のようなものだが、お前はその涼子様の娘。ここまで言えば自分が何者なのか、お前にもわかるだろう……」
紫希の声が、様々な感情で入り乱れる脳内に、すうっと響く。
私はその言葉を聞くなり即座に、彼を見上げた。
彼は立ち上がりざまに、あの閃光のような瞳で私を見やる。
じゃあ、私はお母さんと同じ力を……?
「私が、本当に姫巫女なの? なんにも力なんてないのに?」