狙われし姫巫女と半妖の守護者
砂埃にきつく瞼を閉じる。
「君、汚れた種族のくせにさ、出しゃばりすぎじゃない?」
頭上から響く笑い含んだような声。
そして風を切り裂くような鋭い音が聞こえたと思ったら、短い呻き声が聞きとれた。
即座に目を開けると、薄くなった砂埃の向こうに着物の彼が見えた。
肩袖が切り裂かれ、そこに滲みだしている赤々とした血が、視界に飛び込んでくる。
「ああっ……!」
そんな光景が信じられなくて、顎がガクガクと震える。
さっきから信じられなかった、斬り合いなんて。
こんなこと現実に起こるはずがないのに……。
胸が恐怖でいっぱいになって、息が荒くなっていく。
「やっと大人しくなったね。ちょっと遊びすぎちゃったよ」
私たちを見下ろして無邪気に笑う烏天狗の男に、全身が粟立った。
血を流している人がいるのに、笑えるなんていかれている。
嫌悪感は降り積もって、縛られている手をかたく握った。