狙われし姫巫女と半妖の守護者
彼は私の髪をさらに引っ張り上げ、ぐいと自身の顔に近づける。
ぐらりと揺れる視界に私は臆して瞼をきつく閉じる。
その瞬間、廊下から大きな声がとどろいた。
「ばっ化物! 凛になにしてんだよっ!」
矢のように飛んできた声、靴底が強く擦れる甲高い音。
ハッと瞼を押し上げれば、短い髪を乱したひとりの女子が入口で足を踏ん張って立っていた。
「真央っ! なんで!?」
声を裏返して問う私。
彼は私の頭を棚にぶつけて乱暴に髪をはなし、彼女の方へゆるりと顔を向ける。
横顔からでもわかる。
彼の瞳が少しの情けもなく、冷酷に光っている。
「凛をはなせ!」
「ダメ! 真央すぐに逃げて!」
大きく地を蹴り、空を切り裂いて飛び込んでくる真央。
金切り声をあげて私は泣き叫ぶ。