狙われし姫巫女と半妖の守護者
けれど、いとも簡単に振り払われる私の手。
ひらりと舞い落ちる手の平を目の端で追っていたとき、彼は嘲るように鼻を鳴らした。
「ふん、お主、本当は知っているな。だが、命を奪ったのは我々ではない。あの女は自ら命をなげうったのだ」
私は思わず眉をひそめ、小刻みに首を振った。
怖さを打ち消そうと、手は必死になってスカートの一部にしがみついている。
本当のことを知りたいけれど怖い。
でも、彼の言うことが本当だとは限らない。
紫希も言っていたけれど、普通、この平和な今の世界で、戦死したなんて言われて受け止められる人がどれだけいるだろう。
ずっとずっと会いたいと心の奥底で願い続けてきたお母さんが、普通ではありえない死に方をしたと聞いて、納得できるはずがない。
私はまだ、納得なんかできない。
そんな私を見るなり彼は、余裕綽々な笑みを薄い唇に宿しだした。
「幼かった俺は、当時総代だったおじい様に連れられ、半妖の村に火の海が広がるのを見ていた」