狙われし姫巫女と半妖の守護者


その手に私は怯えて、力の入らない体は岩肌にべったりと貼りついてしまった。

そんな時、耳をつんざくような烏の声が響き渡った。

ひやりとして空を見上げると、一羽の烏が烏天狗の肩にとまり、また一鳴きしてみせた。

「ちっ、すぐ呼びつけないでよ。いいとこだったのにさ」

烏天狗の男はまるで会話でもしているかのように烏へ向かって悪態をつき、あっさりと方向転換する。

そして私たちにこう言った。

「今日はここまでにしておいてあげるよ。まあ、覚醒するまでに迎えに来るから。せいぜい君はそれまで姫巫女を守っておいてよ」

振り向きざまに、皮肉の笑顔を振りまいていく。

すると着物の彼は瞬時に強く地を蹴って宙に飛び、逃げ去る男に向かって刀を振りかぶった。

でも、羽が数枚だけ儚く散っていく。

刀はかすめただけで届かず、男は背中で手を振って空高く舞い上がって消えていった。


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