狙われし姫巫女と半妖の守護者
なにもできることはないのに、苦しんでいる彼を見ると手の平が熱くなる。
けれど、九条くんは戦いのまっただ中だというのに、泣きぼくろのある片方の目を細め微笑んだのだ。
「如月紫希、お主は今も死んだ人間の母の名を名乗っているのだな」
唇を片方の端だけつり上げた悪意を含んだ笑顔。
「さすが汚れの子。下等な人間の姓が似合いだ」
心をすりむいたように痛くなる。
私は黒い光線が飛び交う中へ一歩踏み出しかけた。
しかしその時、紫希は下駄をめりりと鳴かし、一気に光線を押し斬ったのだ。
「戦いの最中だ。その口、きけないように切り裂いてくれるぞ!」
喉を擦り減らすような大声に、耳がキーンとし、私は思わず耳をおさえた。
私は呆然と立ち尽くして彼を見やる。
必要以上にいかった肩。
破れた着物についた鮮血。
ぶれぬ足。