狙われし姫巫女と半妖の守護者


自らまでも刃になったような揺るがない体。

だから、鼻の奥がつんと痛くなって、誤魔化すみたいに拳を強く握ってしまう。

声が、濡れていたのだ。

あの夜の森にいた日の紫希と同じ、彼は今、怒りと悲しみを撒き散らしている。

いきりたってかまえた刃は怒り。

体中のキズは涙。

彼の過去なんて知らないけれど、彼は今、あんなにも泣いている。

私は口元をおさえた。

目頭が熱い。

彼の泣き方は不器用すぎて、見ていられない。

こんな状態になったら、どんなヤケな行動をするかわからない。

私はばくばくと暴れる胸をおさえ、辺りを見やった。

でも、乱麻くんの俊敏な動きは弱まり、どれだけ飛びかかり引っ掻き技を繰り出そうとしても、すぐに跳ね飛ばされ痛々しい姿でまた立ちあがっている。

七瀬くんはあちこちに向けられる黒い光線を、炎で打ち消すだけの防戦一方。


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