狙われし姫巫女と半妖の守護者
室内は一面板張りで、電気器具ひとつ見当たらない。
「ああ、ここは俺の家だ。例の洞窟からほど近い山奥。お前をすぐにかくまえる場所が他に思い付かなくてな。すまないが、今日のことの説明がすむまではここにいてくれ」
紫希は声色ひとつ変えず、私を抱いたまま前進する。
紫希の家?
彼の腕の中、私の心臓は微かに跳ねて、ばつが悪く目をそらす。
紫希の、男の人の家だっていうことを、つい意識してしまう。
そんな子供じみた変な意識、今は持つべきではないのに、不謹慎に鼓動は速まって、私なだめようと心臓を手で覆った。
でも、欲張りな私は気になって、逸らした目で彼の家の様子を改めて盗み見ていた。
家具さえもない、殺風景な室内。
出入口らしき戸が一枚とひとつの窓しかない小さな部屋。
雨風をしのぐためだけのような場所。
鼓動の高鳴りは自然とおさまっていた。
ここが本当に、普段から人が住んでいる場所だっていうのかな……?