狙われし姫巫女と半妖の守護者
優しく耳に滑りこむ声。
あの日にさしだされた、しわくちゃのハンカチみたい。
「だいたいのことは、七瀬さんって人から聞いたよ。信じられなかったけど、あれ、見せられたらね……。怖かったよね、凛」
ねえ、そんなハンカチを出されたら、私はほっとしてまた泣き崩れてしまうよ。
私はもう、あの小さな背中の影に隠れてはいられないのに。
「ねえ、真央。私わからなくなっちゃった。どうすればいいのか」
べちゃりと顔に貼りつけた手の平。
指先が氷みたいに冷たい。
視線が揺れまどう。
胸が痛い。
「誰かがキズつくのを見たくないの。どうしようもなくイヤなの。でも怖くて、私には守る自信がないの。ああ、私は真央みたいに強くなりたかった……」
声が消え入る。
何度だって思い出す。
小さい手を広げて、おかっぱの髪を風に揺らして、颯爽と現れた私のヒーロー。