狙われし姫巫女と半妖の守護者
けれど、山のゴツゴツした岩肌では、突如現れたようにぽっかりと開いた闇の口が、私を見つめている。
気づけば足元の草の間には、くすんだ白いものが埋まっていた。
忘れ去られたようにわびしく転がる土ぼこりにまみれた縄。
いったい、この向こうにある村はどんなところなんだろう。
この縄のように、今は優しい人間にも忘れられ、妖怪に虐げられて、風化した村になっているのだろうか。
そこに笑顔の花はあるのだろうか。
世間知らずの私を受け入れてくれるだろうか。
闇の口から低く静かなため息が響いて、服を、鼓膜を揺らす。
烏天狗の響に襲われた日、私がここをくぐることになるなんて思いもしなかった。
目を凝らしても果てしなく続く闇に、指先の震えを感じ、私は静かに目を閉じた。
「いよいよ、か……」
「なに? 今更怖気づいた?」
そっと漏らした声に、間髪いれず含み笑いの声が突き刺さる。