狙われし姫巫女と半妖の守護者
驚きで大きく開かれたその瞳へ、まっすぐな眼差しを注ぐ。
私はたくさんの感情が交じった声の糸を太く紡ぐ。
「私は、母を知りません。もちろん、母がいないことは悲しかった。ですが、いろいろな人から聞いた母は、どれも強く優しい人で、私の大きな誇りとして、この胸に生きています」
術印のあった場所を、力強く叩く。
雨宮おじさんも、紫希も、さっき会ったお婆さんも、みんなの脳裏で生き続けているお母さんは、今も強く優しい。
それに、この胸から不思議と感じるお母さんの存在は、今だって私に勇気をくれる。
それからなにより、今いるこの村には、お母さんの心がもっと強く息づいている。
「そしてその誇りには、母が愛し守ったこの村も含まれています。ですから、そんなことをおっしゃらないでください。母はきっと、そんな風に思ってほしくはないはずです」
お爺さんの瞳から、ぼたりと綺麗な雫がこぼれ落ちた。
私は改めて背すぎをしゃんとのばし、朱色の膝に両手をつく。
「私の力はまだまだ不安定なもので胸を張れるものではありません。でも、母の愛した村を守りたい。理不尽に攻め入る烏天狗に負けたくない。強いこの彼らと出会い、逃げたくないと思いました」