狙われし姫巫女と半妖の守護者


渡さなければいけないものってなんだろう?

私は目尻に涙を浮かべたまま、ぼうっと紫希を眺めていた。

そうしていると紫希はしなやかな手を懐へ差し込み、なにかを大切に包み込みながら取り出した。

そして、両の手の平にのせ、私の前にゆっくりと差し出した。

私は薄く唇を開く。

それは、出発の前、お父さんが紫希に託していた薄紅の小さな包み。

紫希の細い指が、花開かせるみたいに、その薄紅の布を捲っていく。

布の中から姿を現したのは、赤い縄で蝶々結びされたくすんだふたつの鈴だった。

「正信様からお預かりしてまいりました、初代姫巫女様から代々引き継がれし“守り鈴”にございます」

守り鈴……。

どこかでその名を聞いた。

烏天狗が鈴がどうとか言っていた。

雨宮おじさんは、姫巫女が地を清めるのにそれを用いたと教えてくれた。


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