狙われし姫巫女と半妖の守護者


鈴を包んだ手の平が、胸が、じわりとあたたかくて、涙が頬をどうしようもなく伝う。

初めてお母さんのものに触れた。

「お母さん……!」

泣いて歪んだ口で、愛しい人の名を叫ぶ。

紫希に包まれたあたたかな手を、恥ずかしげもなく泣きながら、額にすりつけた。

私は、お母さんのぬくもりにやっと触れられたんだ。

ずっとずっと、触れてみたかったお母さんの欠片に……。

「大切になさってください」

頭上から紫希の声が光の粒のように降りかかる。

私は大きく頷いた。

絶対に大切にする。

大切にして、私こそがお母さんの想いを継がなくては。

私は強く瞬きをして、自らの名の通り凛と前を向く。

紫希は満足げに目を細めて微笑んでいた。


< 340 / 568 >

この作品をシェア

pagetop