狙われし姫巫女と半妖の守護者
なのに、七瀬くんは穏やかな顔を一気に青ざめさせていく。
「凛ちゃん! なんでここに? おばさんたちに言ってないでしょ? それはまずいよ」
彼の表情が硬直していく。
私は目を点にしてぼけっと彼の顔を見つめる。
なにもすることがないうえに、外に出ただけでそんなに大変なの?
「それは言ってないな……。俺らは今、戦に備えてあそこの納屋に食糧を備蓄してるんだ。でも、村の人は姫巫女様に手伝ってもらうなんて恐れ多くて断られちゃうよ」
彼は荷車から手をはなさずに、この道の少し先にある木でできたほったて小屋を顎で指し示した。
小屋からは中年くらいの男性たちが出てくる。
「大丈夫だから、凛ちゃんは早く部屋に戻って」
私に帰るよう、すまなそうな顔をするとそそくさと歩きだしてしまった。
たんまりと荷物を積んだ荷車ががたがたと鳴きながら、私の手を借りずに、前を過ぎ去っていく。
私は静かに肩を落とした。