狙われし姫巫女と半妖の守護者
紫希の大きい手ではすっぽりと収まってしまうなおちょこを持って、器用にとっくりを傾けいた。
私はのそりと身を起こす。
紫希の手の中におさまった小さな水面に、見事に綺麗な丸い月をうつしていた。
しなやかな顎が上を向く。
彼の顔が一面月明かりを受けて、顔の陰影が美しい彫刻のように照らし出される。
私は見惚れていた、彼の美しさに。
そんな彼が口づけでもするかのように、口に傾けられおちょこから流れ出すそのお酒は、まるで月が落とした涙のようにぞくりとするほど美しかった。
やがて紫希が横目に私を見つめていた。
私は我に返り、ぽろりと本音をこぼす。
「紫希、お酒なんて飲むんだね」
まだそんなに一緒にいるわけではないけれど、いつもかたいくらいに真面目で、お酒をたしなむなんていうイメージは微塵もなかった。
すると紫希は縁側におちょこを置いて、太く息を吐き出した。
「俺はもう24だぞ。こんなに月の綺麗な夜は、酒の一杯も飲みたくなる」